“宮本武蔵”といえば“不敗の剣聖”、剣の道を究めた“精神の求道者”といった、一芸に秀でることで精神的な高みに到達した人物と考える人が多い。しかし僕自身、『五輪書』から感じた武蔵は万能人だったんじゃないか、と。剣はもちろん、絵や書、彫刻、はては築城術といった土木技術、そして生涯独身で左利き――そういったところから日本のレオナルド・ダ・ヴィンチといっても過言ではない。
『宮本武蔵―双剣に馳せる夢―』では、新たな宮本武蔵像を描いています。
よく武士というと、何かと腹を切るイメージがあります。潔いことは大切なことですが、安直な結論を導き出さないのが、知的な人間の最大の特徴。僕が思う宮本武蔵は、野生むき出しの獣のような人物ではなく、知的な人だった。ただ、ものすごい闘争本能の塊。
関ヶ原の役や大阪の役、島原の乱など、生涯に6度の大きな戦に出陣しながらも、その生涯を全うすることができたのはなぜか?二天一流の根本にあるのは何か? 『五輪書』をもとにして宮本武蔵を描くことで、これまで語られたことのない“宮本武蔵像”を感じてもらえれば、と思います。