映画ネタバレ

映画【糸】ネタバレあらすじ!”平成”を綴る温かな愛の物語 感想レビューも

(C)2020映画「糸」製作委員会

映画を観た人が、観た後も幸せになれる映画を作りたい___そんな思いで企画されたこの作品。

「ロクヨン」や「楽園」で知られる瀬々敬久監督が描く素敵な物語です。

中島みゆきさんのヒット曲「糸」から広がったこの世界は温かい想いに包まれています。

北海道・美瑛から始まった物語は東京・沖縄やシンガポールを経て、再び北海道へ。

運命によってめぐり逢い、しかし引き裂かれてしまった二人は、さまざまな縁に導かれて新たな人生を切り拓いていったのです。

ここでは、映画「糸」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。

後半では、感想レビューを書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

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【映画名】予備知識

「映画名」の予告動画

公開日(日本):2020年8月21日

監督:瀬々敬久

キャスト
菅田将暉(高橋漣):
北海道・美瑛に暮らし、チーズ工房で働いている青年。
(少年期:南出凌嘉)

小松菜奈(園田葵):
漣の初恋の相手。運命的な恋をするも大人たちに引き離されてしまった。
(少女期:植原星空)

山本美月(高木玲子):葵の親友でビジネスパートナー。

高杉真宙(冴島亮太):葵、玲子とともにシンガポールで働くビジネスパートナー。

馬場ふみか(後藤弓):葵の友人で、直樹の最初の妻。

倍賞美津子(村田節子):「子ども食堂」の女主人。幼かった葵の面倒を見ていた。

永島敏行(桐野昭三):香の父親。

竹原ピストル(矢野清):葵の伯父。

二階堂ふみ(山田利子):直樹の二番目の妻。

松重豊(富田幸太郎):漣のチーズ工房の師匠。

田中美佐子(桐野春子):香の母親。

山口紗弥加(園田真由美):葵の母親。

成田凌(竹原直樹):漣の幼馴染で、親友。

斎藤工(水島大介):ファンドマネージャー。葵の恋人だった。

片寄涼太(佐々木):水島の秘書。

榮倉奈々(桐野香):漣のチーズ工房の先輩であり、後に妻となる女性。

稲垣来泉(高橋結):漣と香の娘。(幼少時:中野翠咲(みさき))

作品概要
平成元年に生まれた二人…高橋漣と園田葵は、駆け落ちの真似事までした幼い恋を引き離されて大きく運命が変わってしまいました。

8年後、一瞬…交わるかと思われた東京でのひと時、そしてまた離れてしまった二人の人生。

日本を飛び出してシンガポールでビジネスを起こした葵と、北海道の美瑛に根を張るようにしてチーズ作りに励む漣。

平成という時代が流れ、そして終わるまで___彼らと、それを取り巻くように生きていた人々の姿を丹念に描いています。

【映画名】あらすじ(ネタバレなし)

花火の夜の出会い

北海道・美瑛___夏のある日、漣は友達の直樹と部活終わりに自転車を漕いでいました。

目的は花火大会。

ギリギリで間に合わなかった彼は、土手を自転車で転げ落ちてしまいました。

肘を擦りむいた漣にばんそうこうを差し出してくれた女の子…それが葵です。

二人は平成元年生まれ。

そして、13歳になろうとしていました。

サッカーの試合にお弁当を作ってくれた葵。

その時初めて、漣は彼女に「好きだ」と思いのたけを伝えたのです。

しかし、その翌日…葵の姿は美瑛の街から消えました。

花火大会の日に一緒にいた葵の友達・弓が心配して漣をある食堂に連れて行ってくれたのです。

近所の食堂のおばあちゃんは、葵の家の事情を知っていました。

父が亡くなり、母が引き込んだ若い男に、葵は暴力を受けていたのです。

食べるにも事欠いていた葵を不憫に思って、その食堂のおばあちゃんがなにくれとなく面倒みてくれていたのでした。

試合の日のお弁当も、彼女が教えてくれたものだったのです。

引き離されて…

葵の行方を、弓が学校に問い合わせて調べてくれました。

雪の降る寒い日、その姿は札幌の小さいアパートにあったのです。

荒れた部屋の様子、そして殴られた痕を眼帯で隠した葵。

「中学を卒業したら働く…耐えるしかないから」

そう話す葵に、漣は思わずその冷えた手を引いて逃げました。

「そんな処にいちゃダメだ…!」

青森の親戚がリンゴ農家をしているから、一緒に働かせてもらおう…と漣は言いました。

函館からフェリーで逃げるつもりで、彼らは一晩キャンプ場の小屋に忍び込んだのです。

しかし、誰もいないはずのそこに明かりがついていたのを除雪車の運転手が見つけていました。

翌朝には、母親の通報で追ってきた警察が二人を発見し、つないだ手を引きちぎるように引き離されてしまったのです。

「葵ちゃん!」

彼女を守れなかった漣の懸命な叫びは、冴えた空気の中でかき消されてしまったのです。

東京で

八年後、漣は美瑛のチーズ工房で職人として働き始めていました。

その頃…親友の直樹の結婚式に招かれて、彼は初めて東京に向かったのです。

相手は、花火大会で出会った葵の友達・弓でした。

その弓が偶然渋谷で葵に再会し、その披露宴に招待した、というのです。

巻き髪に青いドレス…見違えるほど綺麗になっていた葵を見て、漣はうまく話せませんでした。

「園田は、今どうしてるの?」

大学生になった、という彼女。

あの別れの後、母親にも暴力を振るうようになった男から逃れるように母子で東京に逃げたのだと言います。

パーティの途中で抜け出した葵を、漣は追いましたが。

「漣くんに会えて良かった…」

そう言って、白いベンツに男にエスコートされて乗り込んだ彼女。

(C)2020映画「糸」製作委員会

暮らす世界が違うのだということを痛感させられ、漣は呆然とその車を見送ったのです。

どんぐりと、幼かった恋

漣は美瑛に戻り、どこか魂が抜けたように働いていました。

「女にでもフラれたんでしょー?」

(C)2020映画「糸」製作委員会

先輩の香がからかうように構ってきました。

彼女は、何かあるとどんぐりを漣にぶつけてくるのです。

あるとき、香は漣に告白しました。

10年___中学生の時から付き合っていた同級生がいた、と。

その彼の家はジャガイモ農家で、彼女は彼と、その家族と、時には農作業も手伝い、ずっとこの土地で暮らしていくんだと思っていた、と。

しかしある時、その彼が進学した先の札幌の大学で後輩と付き合うようになり、その女の子が農作業の手伝いをするようになったことに気付いて、恋が終わった、というのです。

「10年だよ?!」

その話を聞いて、葵のことをまだ引きずっていた漣は他人事と思えず、涙をこぼしたのです。

傷をなめ合うような始まり方でしたが、二人は心を寄せるようになり、一緒に暮らすことを考え始めました。

さしのべられた手

葵は母親と逃げた先の東京でも苦労していました。

ちゃんと高校を卒業したい、そして大学にも行きたい…お金を稼ぐには、歳をごまかしてキャバクラで働くしかなかったのです。

そんな彼女を助けてくれたのは先輩の高木玲子。

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そしてその本質を見抜き、手をさしのべてくれたのは客として現れた水島というファンドマネージャーの男でした。

彼のおかげで済むところと学費を得ることができた葵は、経営学を学ぶことができましたが。

そんな水島をリーマンショックが襲います。

ある日姿をくらましてしまった水島。

彼の事業は破綻し、どうしようもなくなっていたのです。

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葵はふと思い立って沖縄に向かいました。

彼がとても好きだった場所があったのです。

そこで見つけた彼に、葵は言いました。

「今度は、私があなたの面倒を見る…!」

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すべてを失い、しかし島の暮らしに溶け込むように生き始めた彼と、葵はひと時穏やかな暮らしを得たのです。

以下、結末までのネタバレになります。ご注意ください。

【映画名】あらすじ(ネタバレ)

母の死

結婚式から一年で破綻してしまった直貴の結婚生活。

弓に浮気をされて傷心だった彼を慰めてくれたのが同僚の利子でした。

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彼女を連れて美瑛に戻ってきた直樹に、漣は香を紹介します。

漣が、そんな香と一緒に暮らすための手続きをしに役所を訪れると、そこに思いがけず葵の姿がありました。

母親の消息を訪ねてやってきた、というのです。

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その行方がわからず、車に葵を乗せて昔住んでいた場所を巡る漣でしたが…伯父が函館にいることを思い出して、そこまで行くことに…。

とつとつと言葉を交わす二人。

そして車を停めたのは…あのキャンプ場でした。

無力だったあの日の思い出を噛みしめる二人。

そして結婚式の日の苦い再会。

今は沖縄にいるのだと、葵は言いました。

そして辿り着いた函館で…葵は伯父から母の最期を聞かされたのです。

亡くなったのは、ひと月前のことでした。

一人で生きることができず、次々と男を頼って娘を顧みてくれなかった母。

「謝ってほしかった…一度でいいから抱き締めて欲しかった」

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そう言って涙をこぼす葵を抱きよせた漣。

「あの時、守れなくて、ごめんね…」

傷心の葵を函館空港まで乗せて、漣は見送りました。

そして彼は言うのです。

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北海道で生きていく、と。

そして、沖縄に戻った葵は、愕然としました。

幾ばくかのお金を残して、水島が姿を消してしまったのです。

またも、彼女は居場所を失いました。

あの日、二人は…

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葵は、キャバクラで一緒に働いていた先輩の玲子に誘われてシンガポールに渡りました。

ネイリストの勉強をしていたこともあり、即戦力として仕事を得たのです。

玲子と、その仲間だった冴島のおかげでようやく安定したかと思われたころ、事件が起こりました。

玲子が客に殴られ、店をクビになったのです。

葵はその理不尽さに怒り、二人で起業しようと提案しました。

大学で得た知識をもとに、会社をやろう、というのです。

そこに冴島も加わり、バイトを掛け持ちして起業資金を貯め、ネイリストの派遣業を始めました。

漸く漕ぎつけた創立記念日は3月11日…日本で未曽有の災害が起こった、あの日のことだったのです。

その日、漣は病院にやってきました。

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香が妊娠し、その検診を受けに来ていたのです。

子供は安定した状態でしたが、検査で腫瘍が発見されていました。

両親も、漣も、まずその治療を優先してほしいと懇願し、説得しましたが。

香は聞き入れませんでした。

そして二人は娘を授かります。

結(ゆい)と名付けたその子は、すくすくと大きくなり、優しい子供に育ちました。

そんな結に、香は常々教えていたことがありました。

「偉くならなくていいから、泣いている人や、哀しんでいる人がいたら、抱き締めてあげられる人になって」

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思わず涙ぐむ漣の脚を、ぎゅーっと抱き締める結。

ほどなくして、香は力尽きるように亡くなりました。

「運命の糸って、私はあると思う」
ただそれは時々もつれて、切れて…でもまた何かに繋がる___その言葉を、漣に残して…。

裏切りと、再生と

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玲子と冴島と三人で立ち上げたネイリストの派遣会社“AOI&REI”は順調に業績を伸ばして7年が経っていましたが。

ある日、玲子が不動産投資でだまされて会社の金を使い込み、銀行に多額の借金までしていたことが発覚し、破綻してしまいました。

一夜にしてすべてを失ってしまった葵。

彼女は身一つで東京に戻り、一人のネイリストとしてやり直そうとしていたのです。

その頃、漣は男手一つで結を育てながらチーズの改良に取り組んでいました。

もう、何年も前からチーズの国際コンクールに出品していましたが、毎回落選していたのです。

香が亡くなって4年。

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その両親も「まだ若いんだから!」と彼の幸せを祈って背中を押してくれようとしていました。

そんなある日、失敗作だと思っていたチーズをフードプロセッサーにかけて混ぜていたら、それを舐めた結が「おいしい!」と呟きました。

漣はその言葉に一念発起し、改良を加えて作り出したフロマージュ・フレが東京の三ツ星レストランに認められ、称賛されるようになったのです。

そして、美瑛の丘へ

ネイリストとして働く葵の元に、冴島がやってきました。

「探しましたよ!」

会社が破綻して一年、彼はシンガポールでエステの会社を立ち上げたというのです。

彼は、葵のことを“出会うべくして出会った人”と言い、一緒に働こうと日本まで誘いに来てくれたのでした。

差し出された航空券。

葵の心は揺れました。

シンガポールに行くべきか…迷っていた時にふとスマホの画面で見つけたのは、懐かしい美瑛の食堂の記事でした。

葵が子供の頃にご飯を食べさせてもらった食堂は、今、地元で子供たちに無償で温かいご飯を食べさせる食堂として知られるようになっていたのです。

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葵は、美瑛に戻ってきました。

食堂のおばあちゃんは、両手を差し伸べて「おかえり」と言ってくれたのです。

思わず、小さな子供のように号泣してしまった葵を、女の子がそうっと抱き締めてくれました。

結です。

驚いた葵に、結は言いました。

「泣いている人がいたら、抱きしめてあげなさい、ってお母さんが言ってたの」

それが、漣の娘だったことを知る葵。
そして漣の妻が亡くなったことも。

彼女は、何も言わずに食堂を立ち去りました。

しかし、結の話から食堂にいた女性が葵だったことに気付いた漣は、彼女を追って食堂にやってきました。

函館からフェリーに乗る、というおばあちゃんの言葉に、彼はたまらず車を走らせたのです。

それは、平成最後の夜のことでした。

混雑するフェリーターミナルで人ごみにもまれながらも互いを見つけ出した二人。

ようやく“葵”と名前で彼女を呼ぶことができた漣。

その寄り添う姿を、令和の幕開けを祝った花火が静かに照らしていました。

【映画名】感想とレビュー

菅田将暉さんの凄みを感じる映画でした。

この人は、くるくると何者にでも変化(へんげ)するのだな、と改めて驚かされます。

そして、こんな”普通の人”をやらせたら、これがまた抜群に巧い、ということも。

今回、少年を脱した二十歳そこそこから、実年齢を超えた三十歳までを演じ、恐らく初めてだろう父親としての姿も見せてくれました。


↑一人一人の役者さんたちのバランスが素晴らしく、糸と言うか、縁の織りなす物語が温かくて、観終わった時にほうっとため息が出る程の完成度でした。


↑今回、娘の結ちゃんを演じた二人の子役さんが素晴らしかったのです。

小さい結ちゃんは、中野翠咲(みさき)ちゃん。
彼女は、映画「STEP」でも山田孝之さんの娘役を演じていました。

大きい結ちゃんは、稲垣来泉(くるみ)ちゃん。

昨年話題になったドラマ「TWO WEEKS」で三浦春馬さんの娘役を、そして映画「人間失格」では小栗旬さんの娘役を好演していた女優さんです。

そして漣と葵の中学生時代を演じていたお二人、南出凌嘉くんと植原星空さん。

するりと菅田さん、小松さんに移行していく時に違和感が全く無くて、素敵なキャスティングだったなと思いました。

ことに、漣くんを演じていた南出くん。

小学生の頃から数々のドラマや映画に出演し「ウロボロス」では生田斗真さんの、そして「ザ・ファブル」では岡田准一さんの子供時代を演じていました。

「葵ちゃん!」と力の限り叫ぶ彼の声と姿は、そのまま菅田さんの芝居に繋がっていったのです。


↑めちゃめちゃ解る!チーズが本当に美味しそうなんです。

撮影時、あのチーズ工房のシーンに出演していた皆さんのランチは、まさにチーズ尽くしで、榮倉さん曰く「顔がパンパンになるくらい食べた」とのこと。

うらやましすぎる…。

さて、この映画の宣伝で菅田将暉さんが話していたことで印象深かったシーンがありました。

直樹(成田凌)の結婚式で、8年ぶりに再会した葵に話しかける時に、もともとは「葵ちゃん」と呼びかける脚本だったのを「園田」に替えた、というのです。

そこには、大人になった彼(漣)なりの矜持があったのだとか。

子供の時のようにファーストネームで呼べない心の在りようがじわっと伝わってくる、そんな表情も見どころです。

食堂のおばあちゃんに「あの子は強い子だから」と言われていた葵。

確かに強い。

そうでなかったら、遠い異国の地で、いつの間にか壊れていたかもしれない…そんな孤独で、しんどい時に行きついた日本食の食堂で、かつ丼を掻っ込む表情が凄い。

泣きながら、でも食べることを止めない彼女。

そこに強さがあるんだな、と思い、その原点が子ども食堂にあったんだろう、と感じさせるシーンです。

↑ラスボス、というわけではありませんが。
その力量としてやはり凄かったのが、食堂のおばあちゃんを演じた倍賞美津子さん。

一本の太い糸というか、軸のように美瑛に根を張って生きていた彼女の存在が、いろんなものを繋いでくれたように思いました。

切れて、ほつれて、もう一度結ばれて…人の世はそういうものなんだな、という示唆がじんわりと伝わってくる、そんな物語。

誰か、大切な人と観て欲しいな、と思う作品でした。

まとめ

メインテーマの「糸」やカラオケの「ファイト!」、そして外国語バージョンの「時代」など、本作にはさまざまな形で中島みゆきさんの歌が登場します。

それはキャラクター達の心理描写の一助となり、また、知っていて聴いている観客の心をぐいぐいとその作品世界に引きずり込んでいく、そんなパワーがありました。

そして何といっても圧巻だったのは、エンドロールの「糸」。

これを聴くためだけに観ても良いくらい、と思った菅田&ひゅーいの「糸」___歌う人ごとに違う「糸」が派生的に生まれる…この歌はそんな魅力にあふれていると実感しました。

根無し草のようにずっと流離っていた葵が見つけた、在るべき場所。

彼女と、漣と、そして結が幸せな令和を生き抜いてくれますように___そう願わずにいられないラストシーンでした。