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映画【影裏】ネタバレあらすじ!岩手県産大友組クラフトムービー誕生!感想レビューも

(C)2020「影裏」製作委員会

自然豊かな盛岡の美しい風景を切り取ったような抒情あふれる物語です。

岩手県出身の大友啓史監督が魅了された沼田真佑さんの芥川賞受賞作「影裏(えいり)」。

純文学の形で表された稀有な心の在り方の物語は、綾野剛さんや松田龍平さんの鮮烈な演技で見事に表されました。

突然目の前から姿を消してしまった”親友”を追い求めて苦悩する一人の男の姿___。

全編岩手県のロケで撮影されているこの作品は、監督自らが”クラフトムービー”と呼ぶほどの情熱を傾け、海外でも高く評価される一本に仕上がりました。

ここでは、映画「影裏」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。

後半では、感想レビューを書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

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【影裏】予備知識

「影裏」の予告動画


公開日(日本):2020年2月14日

監督:大友啓史

キャスト
綾野剛(今野秋一):
医療系資材の会社に勤務するサラリーマン。2009年、埼玉の本社から、岩手県盛岡市に転勤してきた。当時30歳。

松田龍平(日浅典博):
今野の転勤先の同僚で、同い年。
ふとしたことで仲良くなり、酒を酌み交わし、釣りに出かけるようになる。
ある日突然姿を消し、会社も辞めてしまう。

筒井真理子(西山):
今野の会社のパート。夫と娘二人と暮らしている。

中村倫也(福島和也):
今野がかつて付き合っていた恋人。盛岡に彼を訪ねてきた。

平埜生成(清人):
2014年、今野とともに盛岡を訪れたパートナー。

國村隼(日浅征吾):
日浅の父親。

安田顕(日浅馨):
日浅の兄。

永島暎子(鈴村早苗):
今野と同じアパートの上の階の住人。

作品概要

小説「影裏」を映画化したいと希望した大友監督と、開局50周年の記念事業で大友監督に映画製作を依頼した地元のテレビ岩手。

素晴らしいタイミングでオファーされた仕事が結実したのが本作です。

「監督が岩手出身の方なんだから、物語も岩手が良いよね」

テレビ岩手の榧野(かやの)信治社長の意図もあり、岩手で初めての芥川賞ということで、トントン拍子に進んでいったのが本作です。

「 かなしみも、 あやまちも、 大切な人の すべてを 愛せますか? 」

監督が脚本を製作しながら想定していたキャストがまさに綾野さん、松田さんであり、そのイメージが見事に具現化され、東日本大震災を挟んだ数年間の盛岡を舞台にした切ない物語が出来上がったのです。

【影裏】あらすじ(ネタバレなし)

2011年、春

盛岡の医療機器を扱う会社に勤めている今野(綾野剛)は、白い段ボールに詰められた支援物資を被災地に送るために懸命に働いていました。

東日本大震災からひと月が経った頃。

壊滅的な被害を受けた沿岸部の情報が流れ、会社の中でも出社できる人数が限られる中での業務です。

残業を終えて車を出そうとした時、目の前に人影が飛び出してきて急ブレーキを踏み、その相手が会社のパートの西山さんだということに気付いたのです。

「時間をちょうだい」という彼女の車のあとについていくと、古びた喫茶店に入っていきました。

常連らしい彼女は、スイートポテトとコーヒーをオーダーし、今野に振舞ったのです。

2009年、夏

今野は埼玉県の本社からこの盛岡へと転勤してきました。

結婚もしていない独り身なので、ほとんど知る人のない世界に飛び込んだのです。

大切にしているのは鉢植えのジャスミン。

質素な部屋の中で、彼は静かに暮らしていました。

同じアパートの鈴村という高齢の女性には方言交じりで回覧版のことを怒鳴られたり、会社でも私語を交わす人も少ない中で、不思議な男と出会いました。

日浅という彼は、禁煙の場所でタバコを吸っているところを今野に見つかり、しかし悪びれる様子もなく笑ったのです。

その翌日、仕事中の彼に子供のように絡んできた彼。

同い年だという二人は次第に打ち解け、日浅は地元の酒を持って今野の部屋を訪れるようになっていったのです。

川へ

携帯電話を持たない日浅はふらりと現れては今野を誘って飲んだり、会社のさんさ踊りの祭りの練習に巻き込んだり。

(C)2020「影裏」製作委員会

そんな中で今野が次第に夢中になっていったのが渓流釣りでした。

身一つでくればいい、という日浅に誘われて遊びに行き始めた川で、思いがけず楽しい時間を過ごしていった今野は、岩手の豊かな水と森…そして日浅という秘密めいた男の存在に魅せられていったのです。

(C)2020「影裏」製作委員会

彼は東京の大学を出て、その時期に岩手訛りが消えたのだと言っていました。

ある時、日浅はザクロの実をくれました。

子供の頃に日浅の家の庭に生えていた、というザクロ。

たまたま今野の部屋を訪れる道すがら見つけたのだと言うそれは赤く熟れていて、彼は半分にむしるように割ると、片方を今野に寄こしたのです。

「美味い?」
「うん」
「人間の味がするからな」

(C)2020「影裏」製作委員会

昔、老人に聞かされたのだと言うそんな逸話で今野を驚かし、揶揄う日浅。

まるで恋人のような時間を過ごすようになったとき、酒に酔った今野は、思わず日浅にキスをしてしまったのです。

拒まれてしまい、悔いていた今野に、変わらず接してくれた日浅でしたが。

しかし、そんなある日、彼はふっつりと姿をくらましてしまいました。

誰にも相談せずに、会社も辞めてしまったのです。

胸をかきむしられるような喪失感に苛まれながらも、今野は淡々と仕事をこなし、一人で川に釣りに行くようにもなりました。
ようやく独りで過ごすペースができてきたかと思われたころ。

(C)2020「影裏」製作委員会

唐突に、日浅は戻ってきました。

一緒に働いていたころには頑なに切らなかった髪を短くし、互助会の飛び込み営業を生業としているのだと言う彼は、今野にノルマに協力してほしい、と頼みに来たのです。

高齢者が増えて、葬式のことで悩んでいる人が多いから、自分の仕事は他人に喜ばれているのだと話す日浅。

今野は夜釣りに誘われて、キャンプ用品などを揃えて指示された場所に向かったのです。

(C)2020「影裏」製作委員会

しかし、その日仕事帰りに直接やってきた日浅はいつもの快活な彼ではなく、今野の車の停め方や、被っていた帽子などにぶつぶつと文句を言い、感情をぶつけてきたのです。

そこは彼が営業で出会った老人の土地でした。

今野にも親し気に語りかけ、酒を勧めてきた老人に「こいつは下戸だから」と嘘をついた日浅。

これまでにあった無条件に楽しかったはずの二人の時間はどこかに霧散し、その時の日浅には違和感しかなかったのです。

ピリピリとした緊張感と、どこか不穏な匂い。

(C)2020「影裏」製作委員会

営業先の秋田の海岸で見つけてきたという流木をくべた焚火に、赤々と照らされた日浅の表情はこれまでに今野に見せたことのない闇の深さを重ねているかのようでした。

親しいはずなのに、彼の素性や、本心に触れたことがなかった、と今更ながらに気づいた今野。

「知った気になるな!お前が見ていたのは、ほんの一瞬光が当たったとこだけだった、ってこと。人を見る時には、その裏っかわ…影のいちばん濃いところ見んだよ!」

そしてまた二人の道は分かたれて、運命の3月11日を迎えたのです。

以下、結末までのネタバレになります。ご注意ください。

【影裏】あらすじ(ネタバレ)

告白

パートの西山は、コーヒーを飲みながら、今野に日浅のことを話していました。

時折現れてはノルマに協力してほしいと言われて互助会の会員になったこと。

それは夫と、上の娘の分も増えて、しまいには30万円を貸したことも…。

「課長なんだけどさ、死んじゃったかもしれない」

彼女は一緒に働いていたころの肩書で日浅を語ります。

あの日、日浅は沿岸部で津波に流された可能性が出てきたのだ、というのです。

本人だけでなく、車も見つかっておらず。

その行方はようとして知れない、と。

貸した金のこともあって、西山はその互助会の会社にも電話をかけて日浅のことを聞いて回っていましたが。

震災後の今は、会社も混乱しているのか、まともに相手にしてもらえなかった、と。

今野は、新聞に掲載されている避難所の名簿を片っ端からチェックしたり、出来ることから日浅を探し始めていました。

震災から三か月が過ぎた頃。
彼の家族が捜索願を出していないことに気付き、談判するために日浅の父親を訪ねたのです。

深淵の向こう側

父親に、懸命に捜索願を出してほしい旨を話していた今野でしたが。

「次男とは縁を切ったんです。彼はもういないものだと考えています」

そんなふうにきっぱりと父親に言われてしまい、困惑しました。

(C)2020「影裏」製作委員会

どれほど懇願しても、その心は揺るがなかったのです。

父親は、一つの“証拠”を見せました。

紺の布張りの表紙を開くと、大学の卒業証書が出てきました。
しかし、それが偽造されたフェイクだったのです。

きっかけはその卒業証書を偽造した何者からかの接触でした。

会社や周囲にそれをばらされたくなければ、金を払え、と言われて、彼はその要求をのんだというのです。

大学側に問い合わせをすると「その人物が在学していた形跡はない」という返答があり…そして、彼は「むしろ、次男との縁を切るきっかけを与えてくれたことに感謝している」とすら…。

4年間、東京で暮らす日浅に、その家賃や生活費と半期ごとの学費を払い続けたこと。

父親は妻を早くに亡くして日浅と兄の二人の男の子を懸命に育てた末に、その我が子に騙されていたのだと知り、彼との縁を切ることを躊躇わなかったのです。

そして今、多くの人々が行方不明になっているこの状況で、そんな息子を探す手間を警察にかけさせようとは思わないのだ、とも。

彼には、日浅が生きているという確信めいたものがあったようですが。

今野の懇願を受け入れない頑迷さもあったのです。

そして、兄の馨もまた同じく、弟に騙されたことへの困惑と絶望を今野に語りました。

大学に行っていた筈の時期に、出張で東京に行き酒を酌み交わしたこと…そして日浅から大学のことやその頃の暮らしのことを聞いたのだ…と。

別れ際に今野は、ザクロのことを思い出して尋ねました。

馨は「確かに庭にはザクロの木があったが、母が亡くなった頃に父が切ってしまった」と覚えていたのです。

「ザクロの木は縁起が悪いとも言われていました。あの頃の父は、今の私より若かった」

妻を失ったばかりの彼は諸々の悪縁を絶つために、衝動的にその木を切ったのかもしれない、と馨は言ったのです。

時は、流れる

その頃。

今野の元を一人の人物が訪ねてきました。

福島和哉という名の、美しい人。
彼は___今野が盛岡に来る時に別れた恋人でした。

「いつ、したの?」
「あなたがこっちに来た頃」

髪を伸ばし、化粧を施したその姿は女性そのものでした。

見た目だけでなく“彼女”はその身体も変えて生きることを選んだのです。

その時点で、今野がこの地にやってきて丸二年になること。

会社の人たちは、大体3年で本社に戻ってきていることなど、懐かしい話をいろいろとしていました。

とある先輩が長野に赴任し、しかし本社に戻らず、家族とその地で暮らすことを選択して退職したことも。

自分にはそんな勇気はないな、と今野は語りました。

そして自分を訪ねてきてくれたことを感謝し、ハグして別れたのです。

そんな日々の中で。

彼は自分に届いた郵便物の中に、日浅が勤めていた互助会からのDMを見つけました。

積み立てのかけ替えを勧めるその中に、思いがけないものを見つけたのです。

“日浅典博”___ボールペンで書かれたその筆跡を見て、今野は泣きました。
ああ、生きているんだ、彼は…。

2014年、夏

今野はさんさ踊りでにぎわう盛岡の街を歩いていました。

前髪をすっきりと挙げてどこか別人のような風情です。

彼は身軽な格好で釣り竿を手に懐かしい渓流を訪れました。

そこにはもう一人、親し気に振舞う男・清人がいたのです。

「懐かしい?」
「うん、そうだね」

その会話からすると、今野はもうこの地で暮らしていないのかもしれません。

そして、清人は言いました。

「うちの両親、今週末なら大丈夫だって」
「わかった…空けておくよ」

今野はそう言うとひゅっと釣り糸を川面に投げたのです。

いつしか清人は川べりのシートの上で寝息を立て、今野は黙々と懐かしい時間を味わっていました。

木漏れ日、キラキラ光る水、その中に一瞬だけ、日浅の幻影を見た気がしたのです。

___死んだ木に苔が付いて、また新しい芽が出る___その繰り返しだな。屍の上に立ってんだ、俺たち。

懐かしい、朴訥な彼の声が聞えた気がしました。

【影裏】感想とレビュー

久しぶりに、剛くんが”市井の人”を演じる姿を見ました。
彼は突出した異能の人や社会不適合者を演じるのも巧いけれど、こういう、オーラを消したごく普通の人の方が難易度が高く、そして見事にその人格を作り上げます。

そして、大友組の彼といえば「るろうに剣心」の外印(げいん)。
ここからの、今野…役者さんて、凄いなぁ…と思ってしまいます。


凄いといえば…この人も素晴らしい。
同じフレームに映った剛くんと安田さんを見て、時空を飛び越えてしまいました。

日浅のことを”親友”、そして和哉や清人のことを”友人”という言葉を使って表していましたが。

そうか…彼らは今野にとっては恋人だったのだ…と思うとするりと心に落ちるものがありました。

殊更にそうした表現をしているわけではありませんが、今野が暮らす中での孤独感はそこに起因していたのかもしれない、と気づくのです。

知らない土地にやってきた孤独と。

理解し合える人に回り逢える確率の低さ、みたいな。

疲れて擦り切れそうになる中で、ふと見つけた日浅の存在は、その時の今野にとっては生きるよすがのようなものだったのかもしれません。

そうか…ミステリーだったのか…?!

失踪してしまった日浅を追い求めるプロセスは、いわゆる純文学のフィルターを通して…狂おしく切なく、マイルドに補正されていて、ガツガツしていない代わりに、じわっと心にしみていく味があったように思います。

この物語の中ではLGBTという言葉は一切出てこず、さらりと自然に”ああそうなんだ”と描かれている感じがして。

この和哉の笑顔に、きっと今野はとても救われたのだ、と思います。

最後の”救い”が、彼でした。

平野生成さん演じる清人。
彼とその両親が今野を受け入れてくれたら、きっと幸せに生きていけるはず。

私は原作未読でこの作品を見て、ああ、最後にこんな幸福そうな今野がみられるなんて!とホッとしてエンドロールを眺めていました。

ローカル色の強い作品のはずなのに、まるでその土地に暮らして、溶け込んだ者の視点から彼らを眺めていたような、そんな作品です。

大友監督、この次はるろ剣の最終章二連発です。
…どんだけ引出し持ってるんでしょう、この人は___?

まとめ

クランクインは2018年7月。

綾野さんは「るろうに剣心」第一作の外印(げいん)以来7年ぶりという大友組のお仕事でした。

松田龍平さんは、原作で謎ばかりの”日浅”を、実在する人間として浮かび上がらせたという、その芝居が濃密であるほどに、ふっと目の前から消えてしまったその時の喪失感は、観る側も、今野に近いものを感じたのではないでしょうか。

携帯電話を持たない男。
予測不能な、掴みどころのない、彼。

そのだらしなさも、男臭さも、なにもかもに、どうしようもなく惹かれてしまった今野の心情を、大友監督は綾野さんの”瞳”で表していました。

2009年、岩手に初めて赴任したころからずっと、彼の目は前髪に覆われていて、はっきり見えません。

感情をあまり表さない今野は、日浅と過ごすことで少しずつ笑うようになりましたが。

震災後の日々、西山に連れていかれた喫茶店で、彼の行状と、借金の話を聞いていた時の絶望は、目の周りが影で黒くなっていて、まるで人間ではない…化け物のような姿にも見えるほどだったのです。

そのどん底から少しずつ這い上がってきた彼が、やっと吹っ切れたのか。

2014年に盛岡を再訪したラストシーンでは晴れやかに、前髪をあげて額を出して笑っていて。

その視線の先には、優しい笑顔の清人がいたのです。

ああ、やっと彼を大切にしてくれるパートナーが出来たのだと、ホッとして観終わることができました。

美しい映画です。
森も、山も、川も、そして盛岡の街並みも。

それは、多くの人の手を経て紡がれた重厚で濃密な物語でした。

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